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柔らかなチューブに入った油絵の具が開発されたのは、19世紀も半ばのことである。 それまでは何に詰めていたかというと、豚の膀胱なのであった。化学的知識を必要とする油の精製や顔料の調合などは、中世においては錬金術の親戚だったから、それはむしろふさわしかったような気もする。 とはいえ、チューブ入り絵の具が発売されなかったら、モネもこのように気軽に野外で制作を楽しむことはできなかったに違いない。それに、華やかに花を咲かせるバラの根元に豚の膀胱がいくつも並んでいたら、さて、ルノワールはこの絵を描く気になっただろうか。 何気なく地面に置かれた絵の具箱の中のチューブ。これこそ印象派にとって必要欠くべからざるアイテムなのであった。 穏やかな陽射しの下、モネはお気に入りのバラに向かっている。よーし、描いたるわい。という感じである。 自分には絵と庭造りの才能しかない、と謙遜したモネであるが、旅先から出した手紙には、屋敷のバラをまるで恋人のように心配する言葉が書かれていたという。 私の敬愛するカレル・チャペックの『園芸家12か月』にも似たような人物が登場する。ひょっとしてモネがモデルだったのかもしれない。 モダンローズは、ナポレオンの后であるジョセフィーヌのバラ園からはじまったとされているが、それからいくらも経たないうちに、こんな普通の庭先にもすでに何種類ものバラが育てられていたことがわかる。 新種の開発競争は現在でもつづく。大金を投じて青いバラがつくられる。人目をひいて咲くことだけを求められるバラは、走る宿命のもとに生まれるサラブレッドと同じように、少し可哀想に思えてくる。 by フジグリーン・メグ スリノキネット
by kimagure-art
| 2010-05-01 08:35
| モダンアート
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